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「おはよう」
莉佳に声を掛けたのは崎浜だった。
「あ、おはよう。今日は……いつもより早いんだね」
莉佳が腕時計を見ながら言うと、彼は椅子を引いた。
「うん。明日の古文は試験でも大切な所みたいだから、予習しとこうと思ってさ」
……ほんと凄い。
純粋に莉佳は思う。
「勉強、嫌いじゃないんだね」
「……ん~。伊波さんが言う意味とは、ちょっと違うかな。勉強は好きでも嫌いでもないけど、他に集中出来るものがないんだよねー…」
苦笑いを浮かべる彼が、どこと無く寂しそうだったのは、私の気のせいかな…。
「伊波さんは?」
「へ?」
思わず間抜けな返事をしてしまった。
くすっと崎浜が上品に笑う。
「伊波さんはいつもこんなに早いの?」
「あ、いや…うん。週によって違うけど、委員の仕事があるから」
「そっか、…お疲れ様」
ニコッと微笑む崎浜の笑顔は後にノートに向けられ、いつの間にか真剣な表情になっていた。
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