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エルフォトスに数ある国の1つ、カルヴァーナ王国。
その王都たるカルディスの大門に1台の荷馬車が着いた。
荷馬車は大門より少し外れた場所に止まると、1人の黒髪の青年を降ろした。
ややくすんだ色合いのレザーアーマーと、腰にやはり柄等に傷のある古びた剣を差した剣士風の青年(剣士“風”と言うのも、それらしき装備を身に着けながらもそれが余りにも彼にそぐわない風であるからだ)。
青年は手綱を握る男を見上げ、軽く会釈した。
「助かりました。……すみません…俺の為に随分遠回りをさせてしまって…」
青年の言葉に男は人の良さげな笑顔を返した。
「なぁに!用があるのはすぐ其処の村だ。あんたが気にする程の事じゃないさ!」
其処まで言うと男はふと真顔になった。
「なぁ、もう一度聞くが…思い留まる気は無いのかい?うちの村は小さいし、王都から離れて不便だが悪いとこじゃ無い。若い男手があると助かるし…それに…あんたさえその気なら娘っ子達の誰かをめとって…」
「…すみません…」
男は尚も口を開きかけたが、青年の意志が固い事を悟ると残念そうに溜息をついた。
「良い働き手だったんだがねぇ…。まぁあんたにも事情があるんだろうし…。でも婆さんはやっぱり寂しくなるだろうね」
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