心のある場所

15/17
前へ
/107ページ
次へ
「あ、千早」 「何ですか?」 仕事に戻ろうとした僕を直さんは呼び止める。 「さっき雛からメールがあった。今日の晩飯には大も来るから、お前の好きなメニューにしたいって。何がいい?」 微笑むその顔は、家でよく見る"父親の顔"だ。 「んー……じゃあ、オムライス」 僕がそう言った瞬間、さっきの先輩たちがキャーッと悲鳴を上げる。 「かわいーっ!オムライス好きなの?」 「あたし作ってあげよっか!?」 「そこ、うるさい!」 騒ぐ彼女らをビシッと指差して直さんは叫ぶ。 「もー社長たち何でそんな仲いいんですか」 「社長だけずるーい」 「ずるいの意味が分からない。 千早は俺の息子だ、仲が悪くてどうする」 「ええっ!?」 すると彼女らは驚いて叫ぶ。 さっきからいちいち反応がデカイ。 他の社員の人も聞いていたのかザワザワと騒がしくなった。 「親子なんですか!?」 「ああ、言ってなかったけか? 血は繋がってないけどな、俺ん家の息子だ」 そう言ってから、直さんはハッとして彼女らを軽く睨みつける。 「俺の家族構成なんかどうでもいいだろ。仕事しろ仕事!」 「えー」 「えーじゃない。そうか、そんなに暇か。なら仕事をやろう。後で取りにこい」 「えーっ!?」 文句を言う先輩たちを無視して、直さんは奥の社長室に戻っていった。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

623人が本棚に入れています
本棚に追加