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「あ、千早」
「何ですか?」
仕事に戻ろうとした僕を直さんは呼び止める。
「さっき雛からメールがあった。今日の晩飯には大も来るから、お前の好きなメニューにしたいって。何がいい?」
微笑むその顔は、家でよく見る"父親の顔"だ。
「んー……じゃあ、オムライス」
僕がそう言った瞬間、さっきの先輩たちがキャーッと悲鳴を上げる。
「かわいーっ!オムライス好きなの?」
「あたし作ってあげよっか!?」
「そこ、うるさい!」
騒ぐ彼女らをビシッと指差して直さんは叫ぶ。
「もー社長たち何でそんな仲いいんですか」
「社長だけずるーい」
「ずるいの意味が分からない。
千早は俺の息子だ、仲が悪くてどうする」
「ええっ!?」
すると彼女らは驚いて叫ぶ。
さっきからいちいち反応がデカイ。
他の社員の人も聞いていたのかザワザワと騒がしくなった。
「親子なんですか!?」
「ああ、言ってなかったけか?
血は繋がってないけどな、俺ん家の息子だ」
そう言ってから、直さんはハッとして彼女らを軽く睨みつける。
「俺の家族構成なんかどうでもいいだろ。仕事しろ仕事!」
「えー」
「えーじゃない。そうか、そんなに暇か。なら仕事をやろう。後で取りにこい」
「えーっ!?」
文句を言う先輩たちを無視して、直さんは奥の社長室に戻っていった。
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