部屋からリビングまで

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―――パタン 「……ふぅ」 男はやや古びたハードカバーの本を閉じ、小さく息を吐いた 「何度読んでも素晴らしいな」 満足そうな表情を浮かべ椅子にもたれかかる 部屋は薄暗く、机の上に置かれたランプの灯りが、その周囲を僅かに照らすだけ そのランプの灯りが、男の銀色の髪をより鮮やかに見せる 男は壁掛け時計に目をやった 《7時18分》 「いけない、もう夕食の時間だな」 男は本を本棚へ戻すとランプを吹き消す 途端、真っ暗になった部屋で男の目だけが薄赤く光る 窓に近づき黒い厚手のカーテンを開くと、外からは月明かりが差し込んできた 「今日は良い夜だ…」 嬉しそうに目を細めて月を眺めていると、突然下の方から女性の感高い声が飛んできた 「権太ぁ――っ!!! 飯抜かすぞコラ!!」 彼の名は 佐久間 権太(サクマゴンタ) 先月16歳になった高校生の ―――【ヴァンパイア】だ
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