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世間には片足になった貴族が増えてきて、松葉杖をつく姿が目立つようになった。
襲われていない貴族の数より、襲われた貴族の数の方が多い。
貴族が襲われた数に比例して、横暴的な暴力はなくなっていき、今ではほぼ0に近い程だ。
その点から、農民達は“ヤツ”をリスペクトしているが、対して、恐れている一面もある。
なんとも、矛盾した話だ。
そんな人々の思いなど関係ないと言わんばかりに、“ヤツ”は悠然と空を舞う。
今まで狙っていたのは、横暴を行う貴族や、権力を振りかざす貴族を狙ってきた。
それだけを狙うとすると、単なる中小貴族や、善良で農民達に慕われる貴族を抜いて、後二つだけとなる。
その二つとは、これから向かうコーラル家ーーミランダの実家であるーーと、
ボルト家だけだ。
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