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空が臙脂色に曇っている。
私、刑事の息子である水城誠には秘密があった。
実は私も、体に「綺麗な箱」を取り込んでいる。私にはその箱に閉ざされた、もう一つの人格がある。
それは、自らをイナギ称し、私を使い天才を演じる。彼曰く「僕は未来から送られてきた、未来を救うために」らしい。詳細は説明してくれない。
しかし、彼は稀に見る聡明で、数多の難事件を私に変わって、秀才を超越した観察力、推理力、行動力で解決へと導くのである。
私はこのことを、父以外の誰にも告げずにいる。
今日明らかになった。新たな「綺麗な箱」。そのせいか、私の中の僕が、いつもより私に語りかけてくる。
「どうやら奴が動きだしたようだな」
「奴って?」
「未来を犯罪で染める悪人さ」
イナギは、それ以上を語らなかった。
「格ゲーがしたい、ゲーセンに向かってくれ」
と、イナギは抜けたことを言う。
私はイナギと、父と、ある羸弱だが、気の利く女の子のおかげで、探偵事務所を開いている。
父は、前口上もあって、私達が事件に関わることを大方許してくれる。
イナギの能力がなければ、私は探偵事務所を続けることすら難しい。いつも助けてもらっているので、私は渋々、ゲームセンターにいくのだ。
今日は数少ない事務所が休みの日で、いつもは助手的、兼事務所の看板アイドル的存在の青井優と出かけるのだが、今日は何か用事があるらしいので、私は退屈していたから、まあ良いのであるが、一人で街中を歩くのは妙に気が引ける。
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