綺麗な箱

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それから暫くして、イナギの気が済んだようなので、私は晩飯を食べに行くのだ。 若い男が一人、物寂しい様子で放浪している姿を想像して、情けをかけてもらったのか、優からメールが来た。 どうやら、事務所で私の帰りを待っていてくれているらしい。 「イナギ、帰るぞ」 「飯はいらねえのか?」 「優が作ってくれるらしくてな」 「それではすぐに戻ろう」 私は携帯で電話をしているフリをしてイナギと会話するのだ。これなら他人からも不快な目で見られることもない。現代の利器に感謝する一瞬である。 道はほの暗い。街は緊張感を漂わせる。多くの警察官が、あたりを歩いている。あの事件以来、人々は自棄に、周りに警戒心を強めている。 「誠、止まれ」 私は言われるままに止まった。 「なに?」 「下を見ろ」 イナギは冷静だった。「綺麗な箱」が落ちている。どうやら、私達は不運なようだ。 「ラッキーだな」 と、イナギは意味深な発言をする。
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