3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
それから暫くして、イナギの気が済んだようなので、私は晩飯を食べに行くのだ。
若い男が一人、物寂しい様子で放浪している姿を想像して、情けをかけてもらったのか、優からメールが来た。
どうやら、事務所で私の帰りを待っていてくれているらしい。
「イナギ、帰るぞ」
「飯はいらねえのか?」
「優が作ってくれるらしくてな」
「それではすぐに戻ろう」
私は携帯で電話をしているフリをしてイナギと会話するのだ。これなら他人からも不快な目で見られることもない。現代の利器に感謝する一瞬である。
道はほの暗い。街は緊張感を漂わせる。多くの警察官が、あたりを歩いている。あの事件以来、人々は自棄に、周りに警戒心を強めている。
「誠、止まれ」
私は言われるままに止まった。
「なに?」
「下を見ろ」
イナギは冷静だった。「綺麗な箱」が落ちている。どうやら、私達は不運なようだ。
「ラッキーだな」
と、イナギは意味深な発言をする。
最初のコメントを投稿しよう!