綺麗な箱

6/9
前へ
/9ページ
次へ
 優と、雑談をしながら晩飯を口にする。非常に残念な味だった。 「今日は何していたんだ?」 「高校生時代の友人と食事していたんですよ」 「何食ったんだ?」 この質問に対して、イナギが軽笑する。 「そんなこと質問してどうするんだ。もっと繋る話をしてやれよ」 私は話が下手なので、こういうイナギのアドバイスは、自身の向上にコネクトして良い刺激になる。 「ペペロンチーノを食べたんですよ。値段のわりには味が残念でした。誠さんはどうでしたか?」 「うーん、図書館にいたよ」 一人でゲームセンターにいたなんて言えないから、適当に誤魔化しておいた。 私は、いつ話そうか考えていた。イナギは黙っていたが、それは逆に、私を急かしていた。 私達は急にものをいわなくなった。空間には静けさだけが残り、善心が疼く。 「優…」 切り出すまで時間がかかりすぎたか、優は若干不穏に気付いているようだった。 「なんか悲しそうにいうね」 「この先、何があっても協力してくれるか?」 優は目を点にしていた。 「何があっても…?」 そこだけ質問して、頷いた。 「この箱に触れてほしい」 「これって…」 察したようだ。狂気に満ちた犯罪者の人格がはいった、悪魔の贈り物だ。  安穏や平凡は嫌いだが、この時は、それらが輝いて見えた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加