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この探偵事務所には、窓のない密室が一つあり、私達はそこに来た。
「今から、事情を説明する」
「うん」
優の顔は、緊張で染まっていた。前提として、イナギは自分が精神体であることを優に明かした。優は受け入れる力が強いから、たいして驚かず、平然と聞いていた。
「この箱の中には、おそらく、悪意を持った人格が入っている。父、警察も、そのように言っている。わかるな?」
「うん」
「それを、何故優につけるか、疑問に思っただろ?」
「あ、言われてみれば」
ひどく天然だ。
「理由は、優を拘束したいからだ」
「きも」
痛たい…蹴られた。親父にも蹴られたことないのに。
痛覚は、イナギと私、共有のものらしい。初めてそのことに気付く。
「まあ、重いジョークだ」
「自覚はあるようね」
「まあ、話を続ける。優につけなければならない理由は、悪を一つ消すためだ」
「どういうこと?」
「悪意を体から取り除くには、その悪意を気絶、衰弱させ、その時に他の精神体を入れれば良い。つまりは、拘束した優にいれた悪意を、一方的に攻撃…つまり拷問し、目的を吐かせた上で気絶させ、僕を優に入れる」
「で、悪意を潰すのね。でもそれなら、私じゃなくてもいいんじゃない?」
つい先程の私と、反対の質問をしている。
「もし、死刑囚にでもつけて、悪意を消すために僕を入れたあと、その死刑囚が僕を体から出すのを嫌がったらどうする?」
「なるほど」
優は、片手を握り、もう片方は開き、握った手を開いた片方の手に振り落とした。
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