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綺麗な箱
ピアノの音は好きだ。地獄、輪廻が轟音をたてて蠢き、現実には苦痛が広がっている。しかし、この音色は私の心を穏やかにさせてくれる。
ある日、音では静まらないほどの狂気に満ちた事件が起こる。
一人の男が、大型トラックを運転し、暴走。幾人もを撥ね、死傷者の数は十二人にものぼった。男はその後自殺。
死者と男に直接的関係はなく、殺人の動機も見当たらない。男の生活は極平凡で安穏、家族もいる。飲酒運転や病気でもなく、精神状態も安定であった。
この不可解な事件は、時とともに風化するはずだった。
秘めた狂気は人間を兵器にする。この男は、内に狂気を持っていて、それに塗れていたのだ。と、誰もが思った。
それから、暫くのこと。
「また」これに酷く類似した事件が起こった。それから暫く、と。事件は繰り返されるだ。しかし加害者も被害者も、それらしい共通点はなく、如何にも怪奇である。しかし、分析を重ねると、ある重大な共通点がみつかった。
彼等は皆、事件を起こす前に奇妙なことを回りに言っていたのだ。
その要旨は大体こうである。
「綺麗な箱が落ちていたから、拾ったら体に入ってきた」
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