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「八次郎が生きていようと、何処かで死んでいようと、神仏の思し召しであれば仕方のないこと。されど、若さまをお救けすることができたのも、神仏のお導きでございましょう。ですから、どうか、このハツにお世話をさせてくださいませ」  咽喉の傷だけではない、貞吉は心にも深い傷を負っている……。  ハツが貞吉を救け出した時、彼は飯盛山での自刃のことを僅かに語っただけだった。最初に貞吉を発見したのはハツではなく、ハツが身を寄せていた隠れ家の持ち主、渡部佐平だったのだが、その場所は飯盛山ではなく、少し離れた八ヶ森の山中で、貞吉は何者かによって自刃の地から其処へ運ばれ、そのまま置き去りにされていたのだった。
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