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ハツは佐平とその長男の嫁ムメと共に貞吉を隠れ家へ連れ帰り、水や薬を与え、三日三晩に渡って親身に介抱した。
貞吉は、飯盛山に戦死者の懐を漁る盗賊がやって来て、その者が自分の身体に触れた際、未だ自分が生きていることに気づいたと言う。驚いたらしい男が『水を飲ませて差し上げます』と言い、自分を飯盛山の仲間の許から連れ出したのだった。
それらを語り終えた貞吉は、傷からくる熱のせいで人事不省に陥り、昏々と眠り続けた。意識がはっきりしない状態が続いたからか、佐平の隠れ家でのことを貞吉は殆ど憶えていないようだった。
それはともかく、彼が飯盛山で自刃に及んだ白虎士中二番隊士のうち、唯一の生存者であることは、ほぼ間違いない。息子と同じ年頃の貞吉が背負わされた苦しみを思うと涙が出そうになったが、ハツは涙を堪えて笑顔を見せ、貞吉の右手を自分の両手で包み込んだ。
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