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「城が……城が、燃えている……」
「若さま、しっかりなさってください、若さま!」
うなされていた貞吉は、ハツの呼び声に意識を取り戻し、ゆっくりと眼を開けた。
「お気づきになりましたか?」
水に濡らした布で額の汗を優しく拭いてやりながら、ハツは微笑んだ。
貞吉は、座敷に敷いた布団に寝かされていた。
「城が……」
「お城は無事でございますよ」
「あぁ、そうだったのだな……」
貞吉は再び眼を閉じ、吐息をついた。
「酷くうなされておいででしたが、何か夢でも……?」
「いや……」
否定したが、本当はハツの言う通りだった。
貞吉は夢を見ていたのだ。仲間と共に、飯盛山で自刃した日の夢を……。
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