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実は、この時はまだ城は無事で、後になって誤認であったことが判るのだが、若松が盆地であるという地形等から、城下で起こった火災を見間違えても仕方がなかった。 「城が、燃えている……」  城を枕に討ち死にする覚悟だった少年達は、心の拠り処だった城が燃えているのを目の当たりにして、ついに力尽きた。此処で自刃するか尚も戦うかを論議したが、敵に生け捕られて恥辱を味わうよりは……と、彼らは自刃を選択した。あまりに疲れ切っていたのと、負傷者がいたせいもあるのだろう、幼い頃から会津武士としての誇りと生き様を頭に叩き込まれて育った少年達は、生きて恥を晒すより、会津の為に死ぬことを選んだのである。  そのうちの一人、飯沼貞吉も、皆に遅れを取ってはならぬと咽喉を突いて倒れた。が、運命の悪戯か、仲間と共に死んだはずの彼は、絶命寸前に死の淵から救い出されたのだった。
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