第二章 依頼

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そこまで、話したケイは、俺の目をのぞきこんだ。 「あんた、わたしに何か 隠してない?」 あの防波堤の強盗の件 知ってたのか… 話すべきか迷って、俺はだまっていると 「何か知ってるの?あの私が記入したデータの空欄の人の名前…」 えっ? 「あのテロップのように流れるデータの中にあなたの名前が出て来るたとしたらどうする?…」 えっ?えっ? ケイは、何かを探るように俺の目を覗きこんでいる。 俺には何の事か、わからない。 ケイは肩から力が抜けたような溜め息を吐いた。 「すなおちゃん、アンタって昔から分かりやすい男だねぇ。こりゃなんにも知らないな。疑って悪かった。」 ケイは、なぜか少し寂しそうに微笑んでいる。 内心、俺は、少し傷ついていた。 あぁ、そうですよ。 30近くになっても俺は、ガキのまんまですよ。 勿論、くやしいから平然としていたけどね。 「用件は、それだけか?ケイ」 わざとクールに話してる俺に向かい、ケイが続けて 「いや、頼みがあるの…」 と書類を俺に渡す。 「中に入っている人の事、調べて。スナオの名前が流れた台帳の本人のデータよ」 「本当は、すぐに次長に報告するつもりだったけど、アンタの名前が出てるでしょ。 うちの上司、たぶん責任逃れの為、上にもっていくわ。 そしたら多分、警察も動く。 【鳥かご】に関する事なら、なおさらね」 ケイの言葉は もっともだった。  日本の警察と政府は、 世界中から批判のある 【鳥かご】の維持と継続に威信をかけていた。 だから、万が一の些細なシステムの乱れにも、過剰な程反応する。 名前が上がり俺は当然 巻き込まれる訳だ。 やれやれ… 「だからさ、調べて報告して欲しいの。 あんたとの関連を…。 」  ケイは俺の過去の警察との確執をしっているようだった。 だから、この話を上司へ報告する前に俺にもってきたのだろう。 「当然、報酬は払います。別の名目でね」 ケイは笑いながら つづけた。 しかし、その目の奥はわらってなかった。
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