第四章 遺伝子を受け継ぐ者

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仕立てのよいチャコールグレイのスーツを着用し、上品な言葉を使う紳士然とした男の表情には、微笑が浮かんでいた。  誰なのか? 俺の知り合いではない。 このスラム地区の住民にも見えない。 スラムにありがちな悪党でもないようだ。 なぜ俺を知っている?  そんな俺の気持ちを見透かしたように男はこう言った。 「ご不審に思われるでしょう。しかし、これはケイ様もご存知の事でして…。」  これは、また意外な名前が出て来た。 「ケイ?あなたは、ケイをしっているのですか?」 「はい」 男は、微笑を絶やさぬままそう俺に返答をした。 「申し遅れました。私は、黒川の家に仕える倉田と申す者です。」  俺の前に差し出されたその名刺の肩書には   財団法人  【黒川会】理事   倉田 千三 と書いてあった。 なんの組織なのか? この黒川会にも記憶がない。 「とにかく詳しい話を致しますので、私とご同行ねがえませんか? あなたの将来にも関わる大事なお話です。 ケイ様もそれを望んでおいでと思いますが。」 あまり話は、見えてこない。 しかし、ケイの知り合いならば、この倉田と名乗る紳士の話を聞くのもいいだろう。 俺は、事の成り行きを見定める為、話に乗る事に決めた。 「わかりました。お話を おうかがいしましょう。」 無言で倉田はうなずき 軽く右手をあげると、二人の前に車が静かに停まった。 その車に乗れという事らしい。 俺は倉田につづき、車にのりこんだ。
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