第四章 遺伝子を受け継ぐ者

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 話の展開に驚く俺に倉田はどこから説明すべきなのか、明らかに迷っていた。 「梶山さま、DNA登録をご存知ですか?」 「DNAって遺伝子情報ですよね。それが何か関係するのですか?」 「はい。 日本国民のDNA登録は今現在ほぼ終了しています。 その中から我々の財団は、ある種の特異な遺伝子の型を探していました。 それは、特定の体内異物に拒否反応を起こさない免疫を持つDNAです。」 続けて倉田は語る。 「その為、我々は50年に渡り開発援助を実施しました。 しかし人の免疫機能は、複雑です。 なかなか適合するDNAは見つからなかった。  やがて、我々は人為的な人のDNA操作に着手しました。」 「免疫を操作する作業は、たいへんに危険です。 実験は失敗の連続でした。 多くの子供が、免疫不全の為、成長途中で死亡しました。」 …なんて事だ。 この倉田の組織は、 「人体実験」で、モルモットの代わりに子供たちを殺して来たと言っているのだ。  俺は、この紳士面をした倉田の暗い一面を見たような気がした。 こみ上げる嫌悪を抑え 俺は尋ねた。 「なぜそんな人体実験のような真似を…」
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