第四章 遺伝子を受け継ぐ者

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「体内に異物が侵入した時の生体反応が、免疫機能だという事は、わかりますよね。 もし仮に、特定の異物に反応しない遺伝子を持つ人間ができたら? そしてその異物が、人間の作り出した極めて小さな機械、ナノマシンだとしたら どうなります?」  俺は、倉田の意図するモノが見えて来た。  つまり彼らは、人体に異物と認識されない極小のナノマシンを開発している。 その為に遺伝子の操作を行ったのだ。 しかし、それが俺と何の関わりがある? 「あなたの言われる意味は分かります。しかし、それは何かの役にたつのですか?」 俺の質問に倉田は、うなずきながら答えた。 「人間の体には、色々な限界があります。 筋力、老化、病気、障害などです。  これらの限界は、ナノマシンを人体に融合する事で解消する。 我々はそのナノマシンを完成しました。」 「倉田さん、あなたの言ってる意味は、分かる。 しかし、俺と両親、ケイと何の関係がある? まったく関連がないように思えますがね…」  俺の頭の中に疑問付が飛び交っていた。 倉田は極めて冷静な態度で話を続ける。 「実は、あなたのお父上は我々の支援でナノマシンの開発をしていた科学者でした。 そしてあなた自身は、その免疫機能障害を起こさないDNAを持つ子供たちのひとりなのです。」 「ちょっとまってください。 俺は両親からそんな話は聞いていない。 第一、遺伝を操作されたなんて…悪い冗談にしか思えない。 あなた方は、なんのつもりかしらないが…俺にも…」 話の予想もしない展開に 驚き、語り続ける俺。 それをさえぎるように倉田は、こう続けた。 「梶山さま、我々は冗談を言ってる訳では、ありません。 これから先のお話は、このプロジェクトの推進統括者の黒川様から、じかにうかがわれた方がよろしいと…。」 話をしているあいだに俺を乗せた車は、30階はありそうな大きなビルの地下駐車場に入っていった。
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