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俺は、困惑する一也を残したまま、部屋を出た。
外に出ると、黒川の権力の象徴のようにナノロイドの研究室のあるビルが、夕日に赤く染まっていた。
俺にはその赤いビルが、
富や権力でヒトを動かしてきた黒川財閥の陰で
名も知れず泣いてきた沢山の人の血のなみだのように見えた。
おれは、歩きながら帰り道にケイに電話をしようと思っていたが
考えたあげく
電話を止めた。
少なくともケイの今回の
黒川との関わりは、
俺の事を考えての行動だろう。
いつまでも気楽な
「なんでも屋」の俺を
心配している事が
痛い程、俺には
分かっていた。
とにかく
話は流れた。
俺は、家路を
急いだ。
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