はじめに

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「何回言ったらわかるの!!!!」 算数の問題用紙を目の前に、加奈はシクシクと泣いている。 答えがどうしてもわからない。母親に怒鳴られても、全く解らない。 そんな加奈の横では、中学1年生の姉と、4歳の妹がおいしそうなケーキを食べていた。 姉の愛はいつだって成績優秀。それにくらべて加奈は、勉強が苦手だった。嫌いだった。そんな加奈を両親は、馬鹿と呼んだ。 「お前はどうしてこんなに馬鹿なんだ!!」 父親に髪の毛を引っ張られ無理やり正座をさせられる。 もう見たくもない問題集を目の前に出され、父親が細かく説明をする。 「だからこうなるんだ。解ったか!!!じゃあ答えを言ってみろ」 加奈には理解できなかった。 何も、言えなかった。父親は加奈の長い髪を引っ張ると、裸足のままの加奈を家の外に放り出した。雪が降っていて、とても冷たかった。 「お前なんて生まれてこないでよかった」。心まで冷え切ってしまった。8歳の誕生日。大きなケーキ、食べたかったな・・・。 ねぇ、お父さん、お母さん。今でも私を生んで後悔していますか? 今でも私を憎んでいますか。 私は憎んでいません。だって、とっても素敵な恋愛が出来たから。生きててよかったって思えたから。それだけで、生んでくれたあなた達に感謝しないといけないですよね。
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