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まず、俺は対馬に連絡を取った。地図はきっと、彼が持っていると踏んだからだ。
「あぁ。あるよ、ここに。」
そして、夢のようなこの現実を話した。信じてくれなくともいい。その時は別の方法を探すのみだ…と。
「解った。満月の晩だな?と、すると…ちょうど明後日じゃないか!お前の十七の誕生日だよ!これは偶然じゃない。必然だよ。」
興奮気味に話す対馬。
でも、信じてくれて嬉しかった。今までの自分を恥じた。
「ごめんな。ありがとう。」
面食らったのか、少しの間があってから対馬は言った。
「何の。構わないさ。」
と…。
そして二日が経った。
俺は、約束通り八時に校舎へ向かった。そして、対馬の他に会長達もいる事に驚いた。
「どうして?」
「俺達も行くから。」
会長が言う。
「お前の事は認めないけど。お前の姉さんは助けたい。」
と三國が言う。
「でかい葛籠だな。」
対馬が言った時だった。
急に雷鳴が轟き、大雨になった。驚いた俺達は校舎へ向かったが、その途中で会長が転びそうになった。
「わっ。」
「直希!」
対馬が手を伸ばしたら、ズボンのポケットから地図が落ちた。
“ヤバイ”と声に出さずに対馬が言った時だった。『時は来た。』
また、あの声がした。
葛籠がガタガタと動く。皆、怖くなる。そして、地図が葛籠へ向かって…飛んだ!
「え!」
瞬間、稲妻が近くに落ちた。
ドオオオン!!!という地響きにバランスを崩して転ぶ。
「痛て…あ!葛籠!」
俺が確認すると、地図が張り付いている。そして鍵が…
「壊れた…。」
開けてはならなかったのに。どうしよう…
葛籠は、ガタガタと再びひとりでに動き出す。
怖くて、無言で全員が一箇所に集まる。
闇のように真っ暗で、雷鳴轟く中。“それ”は現れた…
「ひっ…!」
真っ赤な瞳に、怨みを宿らせて…“龍の首”は言った。
「我が街へ…。」
「あああああ!!!」
世界も身体もグニャリと曲がったように感じた。
俺達は、龍に引っ張られた。
そして世界は終いへと、一歩を踏み出した。
「この空…空気。開いてしまったか…この世の終いじゃ。」
周五郎じいちゃんは、空を見上げ呟いていた。
何度も繰り返し、聞こえる…。
『我が街へ』
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