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第二章 鬼の住む街
さわさわと優しい風が、頬を撫でる…ゆっくりと瞼を開くと、青々とした空が目に映る。
「目、覚めたか?」
三國の声に驚いて、飛び起きた。知らない景色に言葉を失う。“何処だ?ここ…”
「対馬と角田は、場所の把握。芹澤は食料確保。」
「え?芹澤、ひとりで大丈夫か?」
俺の意見に、珍しく三國が賛同した。
「俺もそれは言ったんだよ。お前のお守りは芹澤にして、俺が食料確保に行くって。だけど、あいつがやる気出すから対馬が…。」
ハッとして、三國はしかめっ面をしながら顔を背けた。
“ま、いっけどさ。俺が悪かったんだし…”
それから、二人とも黙ったまま時間が経つ。さわさわと風が気持ちいい。
「確実に、東京では無いな。」
と、俺は呟く。
三國は黙ったままだったけど、微かに頭を縦に振った気がした。
再び微妙な時間が訪れた時、角田の声がした。
「あれ?起きた~?」
“流石お母さん。心和むわ~”と、感じた。
「で、何処なんだ?マジで地図に吸い込まれたのか?」
三國が、対馬に詰め寄る。
「それは、まだ解らない…。だけど。此処が俺達の知っている世界では無い事は確かだ。」
その言葉に、血の気が引く。知らない場所なのは解る。でも、知らない“世界”となると…恐い。
「そういや、芹澤は?」
角田の問いに、三國が心配そうに答える。
「来ねえんだよ。かれこれ二時間…あいつ、大丈夫か?」
「ここさ…。明治か昭和初期って感じ。タイムスリップだとしたら、紙幣も貨幣も違うよな?」
対馬の言葉に全員、血の気が引いた。
「あいつ、どっち言った!?」と、三國。
「確か…こっち!」
と、自分達が帰って来た逆を指差す角田。
「考え無しだった!俺とした事が!」
対馬が、悔しがる。
俺は対馬に言った。
「大丈夫。そんな気がする…あ!葛籠を忘れてた!葛籠は!?」
俺の叫びに近い問に、三國が答える。
「無いぜ。此処に落ちた時から、欠片も無い。」
「―解った。」
本当は何一つ解ってないけど、俺はそう言った。
「小川。大丈夫だ。」
今度は、対馬が言った。
顔を見合わせ、笑う。
「サンキュ。」
そして、四人で暫く捜していると。遊廓らしき場所に着いた。よく時代劇で観るような景色だ…。
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