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対馬は何故か怒っていたので、不思議に感じて俺は問い掛けた。
「何で怒ってるんだ?」
「何が太夫だ。最高位の花魁は客引きしねえんだよ。」
「そうか。そんな位になれば、花魁道中するようになる。それで覚えてもらうんだな?」
「新造を巻き込んだ、どうしようも無い女郎だな。」
「新造?」
「まだ水揚げしない子供の事だよ。しかも…恐らくこの時代に太夫は存在しない。宝暦でないと思う。」
「宝暦?」
「そうだよ。本来ならこの時代に廓など無い。いや、一部ならあったのか…やはり此処は明治か。」
“流石、万年一位の副会長だけある。”そう感心した。
「宝暦って?」
三國が聞くと対馬はしっかり教えてくれた。
「宝暦は、日本の元号のひとつで。寛延の後から昭和の前までを言うんだ。西暦で言えば1751年から1763年だな。太夫てのは一番高い位に居るから。揚げ屋から引茶屋を経由しないと会えないんだよ。つまり、遊女屋から茶屋までだな。その間を花魁道中と言うんだ。」
「へえ…。」
三國が感心していると、会長が呆れて言った。
「花魁はいいから、まずは芹澤だろ?揃わないと安心して小川の姉さんも探せない。」
「すまん、直希。」
謝る対馬に俺は首を振った。
「いや。希望見えたし。でも、人買いなんて…希望じゃないか。」
沈んでると会長が、背中を撫でてくれた。
「大丈夫。必ず無事に助け出そう。」
「会長、ありがとう。」
「小川。会長て呼ばないでよ。同じクラスなんだしさ。角田か直希でいいよ?」
ニコッと笑って言ってくれた。
「え…じゃぁ。角田…これから宜しく。」
「こちらこそ。」
「話が纏まったなら行くぞ。さっきから人相の悪い兄さん達が、ついて来てる。」
いくらか後ろから、如何にもガラの悪い集団が俺達を狙っている。まぁ…
「毛色が違うから?」
対馬が皮肉る。
チッと三國は舌打ちすると、叫んだ。
「走れ!!」
四人、一気にダッシュする。
「なろう、追い掛けろ!」
知らない世界
知らない街
知らない男達に追い掛けられる…“恐い。姉さん、芹澤!早く見付けたい!早く帰りたい!”
「こっち!」
「うわっ!」
「痛っ!」
「あ!?」
「お?」
いきなり女の子の声がしたかと思ったら、全員引っ張られた。何が何だか解らない。
「何処に行った!?」
「畜生、金になりそうなガキだったのに。」
さっきの男達が、騒いでいる。ドクンドクンと心臓が高鳴る。
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