第二章 鬼の住む街

3/8
前へ
/43ページ
次へ
対馬は何故か怒っていたので、不思議に感じて俺は問い掛けた。 「何で怒ってるんだ?」 「何が太夫だ。最高位の花魁は客引きしねえんだよ。」 「そうか。そんな位になれば、花魁道中するようになる。それで覚えてもらうんだな?」 「新造を巻き込んだ、どうしようも無い女郎だな。」 「新造?」 「まだ水揚げしない子供の事だよ。しかも…恐らくこの時代に太夫は存在しない。宝暦でないと思う。」 「宝暦?」 「そうだよ。本来ならこの時代に廓など無い。いや、一部ならあったのか…やはり此処は明治か。」 “流石、万年一位の副会長だけある。”そう感心した。 「宝暦って?」 三國が聞くと対馬はしっかり教えてくれた。 「宝暦は、日本の元号のひとつで。寛延の後から昭和の前までを言うんだ。西暦で言えば1751年から1763年だな。太夫てのは一番高い位に居るから。揚げ屋から引茶屋を経由しないと会えないんだよ。つまり、遊女屋から茶屋までだな。その間を花魁道中と言うんだ。」 「へえ…。」 三國が感心していると、会長が呆れて言った。 「花魁はいいから、まずは芹澤だろ?揃わないと安心して小川の姉さんも探せない。」 「すまん、直希。」 謝る対馬に俺は首を振った。 「いや。希望見えたし。でも、人買いなんて…希望じゃないか。」 沈んでると会長が、背中を撫でてくれた。 「大丈夫。必ず無事に助け出そう。」 「会長、ありがとう。」 「小川。会長て呼ばないでよ。同じクラスなんだしさ。角田か直希でいいよ?」 ニコッと笑って言ってくれた。 「え…じゃぁ。角田…これから宜しく。」 「こちらこそ。」 「話が纏まったなら行くぞ。さっきから人相の悪い兄さん達が、ついて来てる。」 いくらか後ろから、如何にもガラの悪い集団が俺達を狙っている。まぁ… 「毛色が違うから?」 対馬が皮肉る。 チッと三國は舌打ちすると、叫んだ。 「走れ!!」 四人、一気にダッシュする。 「なろう、追い掛けろ!」 知らない世界 知らない街 知らない男達に追い掛けられる…“恐い。姉さん、芹澤!早く見付けたい!早く帰りたい!” 「こっち!」 「うわっ!」 「痛っ!」 「あ!?」 「お?」 いきなり女の子の声がしたかと思ったら、全員引っ張られた。何が何だか解らない。 「何処に行った!?」 「畜生、金になりそうなガキだったのに。」 さっきの男達が、騒いでいる。ドクンドクンと心臓が高鳴る。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加