第二章 鬼の住む街

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血の気が引き、胃液が上がる。頭を上げられない。目が合うかと思うと…恐い。 「…わ。小川!」 「わぁ!」 会長。いや、角田の声に驚く。皆、耳を塞いでいた。 「うるせぇな。」 「ごめ…。」 三國には、やられっぱなしだ。何だか、自分を恥じたあの瞬間から全てに頭が上がらない。 「大丈夫ですか?」 「ええ、大丈夫です。―て、君は?」 さっき、助けてくれた少女に問い掛ける。まだ十二・三歳くらいかな? 「私は、千左(ちさ)と言います。この先の廓、『龍泉』で買われました。―さっきの女衒に連れて来られて。」 女衒… 「俺達も売る気だったのかな…?」 角田の言葉に、またゾッとする。早く芹澤を見付けなければ!! 「あの…兎に角、我が廓にいらしてください。食べる物ならありますから。」 そういえば、食糧調達の芹澤が戻らないから。めちゃくちゃ腹が空いていた事に気付く。 「ありがとうございます。」 対馬が礼を述べると、千左という少女は笑った。 三キロは歩いただろうか。大きな廓が、目の前に… 「ここです。お入りください。おかあさん!」 おかあさん…と呼ばれた四十代の女性が小走りで来た。 「―誰だい?」 訝しげに聞く。 「人買いの仁治(じんじ)達に追われてたの。お友達を探してるんですって。」 「友達ね…見た所、学生のようだけど。経緯(いきさつ)を聞こうか。」 経緯…何て言う? “僕達は未来から来ました。友達が悪い輩に捕まってるかもしれません。力を貸してください”? 硬直したまま、黙ってる俺の隣で。角田が語り始めた。 「僕達は、全員記憶喪失なんです。」 俺と三國は、眼を見開いた。 「気付いたら、此処より少し離れた丘に居ました。幸い、名だけは覚えていましたが…食糧調達に向かった一人が戻らず。探してるうちに、人買いに追い掛けられて…千左さんに助けられて現在に至ります。」 いや…なんでも、全員記憶喪失なんて信じないだろうと思っていると。千左ちゃんは顔色を変えて話し出した。 「おかあさん。先代の遺言通りですね。」 「遺言?」
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