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「対馬?何故、断言出来る?」
三國が、問う。
「簡単だよ。この詳しさと…この廓の名前かな。気付かなかった?」
廓の名前…
「龍泉。」
角田が呟く。
勝ち誇ったように、対馬が笑う。
「そう。龍の字が入った廓は、ここしか無い。違いますか?」
すると、降参したようにおかあさんは溜め息をついて話し始めた。
「そんなに頭が切れるんでしたら、御自分の名前以外も思い出せるんではないですか?」
と、ひとつ嫌みをついてから…。
「そうです。でも、さっきも言いましたが、千左は何も知りません。葛籠はここにはありませんよ。あの人が…持っていますから。」
「―鬼?」
つい、俺は言ってしまった。ヤバいと思って手を口に当てる。
チラリと俺を見て、おかあさんは肯定した。
「ええ。鬼は龍を護ってます。好奇の目に晒されないように。―暴れて傷付かないように。」
“暴れて傷付かないように”
俺は。恐ろしいと言われた鬼は、実は一番の龍の理解者だったように感じた。
「もしかして、烙巌(らくがん)様?」
千左は、おかあさんに問う。
「…そうよ。あの方が“鬼”よ。」
「烙巌とは?」
「呪術師様よ。この先の神社に住んでるわ。」
「何故、彼が鬼だと?」
三國が千左に問う。
「だって…、前に言っていたのです。“私は護りたいものを護れなかった”と。それは、龍神様の事では無いのですか?」
皆、呆気に取られる。
この子は、何者だろうか。ただの少女には見えなくなった。
「鬼の住む街…。」
三國が呟く。
すると、おかぁさんは厳しい目で聞いてくる。
「其れを何処で?」
「え。何となく?―すいませんでした。」
三國は驚いたが、とりあえず謝った。
対馬も言っていたが、聞こえていなかったのか?兎に角、誤魔化さなきゃと感じた。
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