第一章 我が街へ

1/11
前へ
/43ページ
次へ

第一章 我が街へ

祖父が亡くなった。 祖父は小さい頃から骨董好きで、コレクターだった。そんな祖父が唯一触れてはならないと言っていた葛籠は、頑丈に鍵が掛かっていた。 だけど、本人は鍵を持っていなかった。 俺は興味が無くて半ばバカにしていた。 しかも、葛篭の存在も忘れていた。 「誠悦?おじいちゃんの遺品の形見分けしてるよ。」 姉の塔子が言う。 大学一年の…どことなく掴めない女性(ひと)だ。 俺は、小川誠悦。私立高等学校二年だ。 「どうせ、先頭きって選んでるのは親父だろ?」 冷たく言い放つ。 親父は、根っからのギャンブル好きだ。きっと、祖父の骨董も売り捌くつもりだろう。 「私は、約束した物があったから…もう貰ったよ。あんたも行って来なさい。」 「興味無いよ。」 そう答える俺に、姉は厳しく言った。 「ダメ。ひとつだけ。おじいちゃんと繋がる物を持っていなさい。」 駄々をこねる程、俺も子供じゃない。反発心を抱えつつ立ち上がり、姉の目を見て答えた。 「解った。」と。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加