第一章 我が街へ

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「見たいったって、鍵掛かってるよ。じいちゃんも持ってないはずだよ。」 親戚達は、黙って俺達の会話を聞いてる。その沈黙が気に入らず、部屋に戻りたい。 「そうか…。仕方無いよなぁ。じゃ、中身見れなくてもいいのか?」 「別に。形見だから…いいよ。」 そう、呟いた俺は葛籠を担ぐ。 「おやすみ。」 「おう。」 親父の声を背に、階段へ向かう俺を姉が呼び止める。 「誠悦?葛籠貰ったの?」 「そう。」 「惹かれて?」 姉の一言に、息が止まった。驚きのあまり、目を見開く。 「どうしたの?」 「当たってるから…びっくりしたんだよ。」 「ああ。だって、姉弟でしょ?私も惹かれたの。これ。」 姉は、首に掛けていた懐中時計を見せてくれた。 「私が三歳の時。おじいちゃんが、大事そうに見てたの。この龍の彫り物に魅入ってね…欲しいかい?て聞くから、頭を縦に振ったの。そしたら『おじいちゃんが死んだらあげるよ』て…。」 ちゃんと見たくて、懐中時計に近付く。 「触ってもいい?」 「いいわよ。」 瞬間、またあの声がした。 『街じゃ。街が見える。』 また、手を引っ込める。 姉も、怪訝そうに俺を覗き込む。 「大丈夫?」 「―声、聞こえなかった?低い…男の声。」 「おじ様達?」 「違う。全然違う声だよ!」 姉は、困った顔をする。 また…俺だけか。 「おじいちゃんと、何か関連あるのかしら。気にしないで、寝ちゃいなさい。もう直ぐ日付跨ぐわよ?」 「おやすみ…」 「おやすみ。」 納得いかないけど、仕方無いよな。だって、俺にしか聞こえない声って何だよ。 有り得ないよな…。
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