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「見たいったって、鍵掛かってるよ。じいちゃんも持ってないはずだよ。」
親戚達は、黙って俺達の会話を聞いてる。その沈黙が気に入らず、部屋に戻りたい。
「そうか…。仕方無いよなぁ。じゃ、中身見れなくてもいいのか?」
「別に。形見だから…いいよ。」
そう、呟いた俺は葛籠を担ぐ。
「おやすみ。」
「おう。」
親父の声を背に、階段へ向かう俺を姉が呼び止める。
「誠悦?葛籠貰ったの?」
「そう。」
「惹かれて?」
姉の一言に、息が止まった。驚きのあまり、目を見開く。
「どうしたの?」
「当たってるから…びっくりしたんだよ。」
「ああ。だって、姉弟でしょ?私も惹かれたの。これ。」
姉は、首に掛けていた懐中時計を見せてくれた。
「私が三歳の時。おじいちゃんが、大事そうに見てたの。この龍の彫り物に魅入ってね…欲しいかい?て聞くから、頭を縦に振ったの。そしたら『おじいちゃんが死んだらあげるよ』て…。」
ちゃんと見たくて、懐中時計に近付く。
「触ってもいい?」
「いいわよ。」
瞬間、またあの声がした。
『街じゃ。街が見える。』
また、手を引っ込める。
姉も、怪訝そうに俺を覗き込む。
「大丈夫?」
「―声、聞こえなかった?低い…男の声。」
「おじ様達?」
「違う。全然違う声だよ!」
姉は、困った顔をする。
また…俺だけか。
「おじいちゃんと、何か関連あるのかしら。気にしないで、寝ちゃいなさい。もう直ぐ日付跨ぐわよ?」
「おやすみ…」
「おやすみ。」
納得いかないけど、仕方無いよな。だって、俺にしか聞こえない声って何だよ。
有り得ないよな…。
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