第1章

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《真帆 この手紙はお前が見付けない限り、一生誰にも読まれることはない。 お前と俺だけが知ってる残った唯一の切り札みたいなもんだ。 そもそも俺みたいな人間が手紙を残してるなんて 誰も思いもしないだろうしな。 武藤から連絡が来た。 「明日、全部返してもらう」ご丁寧に時間と場所まで付けて。 アイツはよっぽど俺が憎いらしい。 真帆、もしお前がこの手紙を読んでいるとしたら 俺はもうこの世にいないことになる。 だけどお前は なんとなく、この部屋には帰って来ない気がする。 いつもそうだった。 お前は本当に辛い時だけ、ここには帰って来なかった。 俺は、多分明日死ぬ。 真帆を売るか 俺が死ぬか 迫られる決断はその二択だと思う。 俺は、後者を取る。 真帆のこと、全部知ってるつもりでいた。 分かりあってるつもりだった。 その上で何もしなかった。 悪いと思ってる。 心から悪かったって思ってる。 全部話したい。 今すぐ、すべて。 なんでどこにもいねぇんだよ。 明日俺に真実を話す時間が与えられるとも思えない。 だからここに全部書いておくことにした。 何年、何十年先でもいい。いつか真帆に伝わればいいと思ってる。 》
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