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《俺があの施設に
母親に連れられて来た時
出迎えたのは先生と
先生の手伝いをやってた美香。
それからやけに陰オーラの漂う無表情なガキ。
まったく覚えてないなんて言ってたけど
美香の後ろにぴったりくっついてじっと俺の母親を睨んでいた。
それが真帆だった。》
「美香ちゃん!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「あ、真帆ちゃんも一緒だったのね。いるなら返事くらいしなさい。」
「・・・・なに?」
「新しい兄弟の到着よ。一緒に出迎えてちょうだい。」
「はい・・・」
「・・・・・先生…」
「真帆ちゃんも来る?」
「うん。」
早足で玄関へ進んでいく美香の後を
すぐに真帆が走って追いかけた。
玄関先にはすでに黒い車が見えている。
「・・・あれか。」
「・・・女の子かなぁ?男の子かなぁ?」
「来たよ。」
運転席が開き、母親らしき金髪の派手な女が降りた。後部座席からは真帆と同じくらいの少年が遅れて降り、うつむいたまま母親のあとを付いて来る。
カラスの鳴き声がやけに大きく夕焼け空に響いた。
「じゃ、よろしくお願いしますねぇ。」
「・・・確かに…お預かりします。」
少年は三人を食い入るように見つめた。
母親は少年に重い荷物を乱暴に手渡し、会話もなくさっさと車へ戻っていく。
先生は少年の肩を持ち、
支えるように院の中へ入った。
「12歳だって、真帆ちゃんと同い年よ。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「2人とも、すぐに仲良くなれるわ。心配しなくていいからね、健人くん。」
「・・・・・・・・・・。」
夕飯中も、健人は一言も発しないままだった。
「雅彦、美香は?」
「さっき出掛けたみたいだよ。」
「・・・・ちぇ。遊んで欲しかったのにぃ・・」
「おいで。代わりに俺が遊んであげよう。」
「え~」
「なんだよ!」
「あはははっ!嘘だよ、遊んでっ♪」
雅彦はこの頃から真帆を妹のように可愛いがっていた。
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