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それから2人の“普通”探しの旅が始まった。
真帆は不在が多かった美香の代わりのように
健人の行くところ行くところ、くっ付いて回るようになった。
健人が来てから、あっという間に1ヶ月が経ったが、健人は真帆以外誰とも口をきかなかった。
真帆とも、1日中一緒にいてもほとんど会話はない。
でも不思議と自然に2人はいつも一緒にいて、目くばせや表情で会話をしていた。
何事もなく穏やかな日々が続いたが、
真帆の部屋の動物は
だいたい3日に1匹程度、変死体になっていた。
「・・・真帆。」
「健人っ!ハムスターが・・・!」
「・・・・・・。」
花瓶に押し込められ、水死していた。
「・・・なんでだろう。落っこちちゃったのかな?」
「・・・・・・・・・・・。」
真帆がハムスターを摘まんで花瓶に入れたところを
健人は見ていた。
苦しそうにもがき苦しむハムスターをボールペンの先で、沈めたり浮かばせたりしながら、恍惚の笑みをうかべる真帆を偶然にも見てしまった。
「真帆の部屋、呪われてるのかも・・・。」
「・・・・・・・・真帆。」
「・・・なに?」
「お前、本当に覚えてねーの?」
「なにを?」
「・・・なんでもない。」
「埋めに行こう・・・」
真帆の目には涙が浮かんでいた。
健人が先生と初めてまともに話をしたのは、
真帆の動物殺害癖のことだった。
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