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カルロに勝ったエリックは、控え室に戻りハクと会話していた。
「おやおや。そんな事があったんですか」
ハクは今にも吹き出しそうな顔をし、エリックの話を聞いている。
「何を口論していたのかと気になりましたが……。まさか、そんなことで口論していたとは」
「カルロがムカついたんだから仕方ないじゃん」
クスクスと笑うハクを見て、エリックは拗ねたようにそっぽを向いた。
「でも、カルロさんは自宅で訓練していないようでしたからね。エリックさんの説教が効くと良いですけど」
ニコリと微笑むハクと、くだらないことで口論する自分を見比べ、エリックはため息を吐いた。
(ハク君のほうが大人だな……)
「やったー!」
その時、通路の奥から、女の子の歓声が聞こえてきた。
その声は次第に近くなり、控え室のドアが開くとともに、歓声の発生源が部屋に飛び込んできた。
「勝ったよ! 私、勝ったよ!」
部屋に飛び込んできたのはルナ。
彼女の歓声があまりに大きく、エリックとハクは両耳に手のひらを当て、耳栓代わりにした。
「お、おめでとうルナ」
「おめでとうございます……」
エリックとハクは顔をしかめながらルナに声を掛けるが、ルナの耳には届かない。
「やっぱり私、強いのよ! これでベスト8! ブロック代表! 私、今なら神にだって勝てる気がするわ」
舞い上がるルナに対し、エリックは冷静に言葉を返す。
「それはない」
直後、控え室内に重く鈍い音と、エリックの悲鳴が響き渡った。
「とにかく! 私たちはブロック代表になった! 明日からの決勝トーナメント! 頑張るわよ!」
「はい!」
「ふ、ふぁい!」
ルナの掛け声に合わせて、ハクとエリックが答える。
「あ? 返事は、はい、だろが?」
ルナがエリックに脅しを掛ける。
「ずびばぜぇんでじた」
エリックの顔面にルナの拳がめり込む。
「おぶっ……!」
「黙れ」
痛い思いをしながら、エリックは思った。
(去年も同じ様な事があった気がする)
続けて、こう考えた。
(このまま、一生ルナに頭が上がらないんだろうな……)
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