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ルナとエリックが控え室で会話をしていた頃、ハクは闘戯場でツクヨミと向かい合っていた。
『決勝トーナメント一回戦、第一試合はハク君対ツクヨミ君!
一回戦最大の注目カードです!
二年生のハク君は光属性を扱う希少な人間です!
剣術、魔法共に高いレベルを維持していますが、今大会では魔法を殆ど使わず勝っています! 隠された実力をこの試合で見ることができるのか?
対するは三年生のツクヨミ君!
こちらも闇属性を扱う希有な人間です! ツクヨミ君も未だその実力の全容を見せていません!
楽しみな組み合わせとなりました! さあ! 試合開始まであと少しです!』
「ハク君。君と僕は似ているね」
アナウンスの終了と同時にツクヨミが口を開く。
「似ていますかね?」
ハクはそれに問い返した。
すると、ツクヨミは無表情のまま答えた。
「剣術も魔法も得意。つまり、欠点が無いということや、冷静であることなどですよ。まあ、全く似ていない部分もありますが」
「似ていない? どのような部分がですか?」
ほほ笑みを浮かべ、ハクは言葉を発する。
「光と闇ですよ。まるで正反対。常に注目を浴びる君と、誰にも注目されない僕。僕ら二人は正反対だ」
まるで無表情のツクヨミから発せられる言葉。
感情が読めないその口振りに、ハクは苦笑した。
「それは、目立つ僕に対する嫉妬ですか?」
ツクヨミはじっくり考えた後、首を振った。
「いいえ。違います。不思議だな、と思っていただけです。扱う属性と性格には相関関係があるような気がして」
その言葉に、ハクは思わず頷いた。
「それについても研究が行われているようですね」
性格と属性は関係があると言われ続けてきた。
火属性の人物に激情家が多いように、風属性には楽天家、水属性は冷静な者が多い。
光と闇も同様だった。
「とりあえず、勝負しようか。僕らの勝負を楽しみにしている観客が多いようだし」
そう言い、ツクヨミはオールバックにしている黒髪を両手でセットし直し、直立不動の構えをとる。
(よく分からない人だ……)
そう思いながら、ハクも軽く構え、戦闘態勢をとった。
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