決勝トーナメント

4/31
前へ
/454ページ
次へ
  ルナとエリックが控え室で会話をしていた頃、ハクは闘戯場でツクヨミと向かい合っていた。     『決勝トーナメント一回戦、第一試合はハク君対ツクヨミ君! 一回戦最大の注目カードです! 二年生のハク君は光属性を扱う希少な人間です! 剣術、魔法共に高いレベルを維持していますが、今大会では魔法を殆ど使わず勝っています! 隠された実力をこの試合で見ることができるのか? 対するは三年生のツクヨミ君! こちらも闇属性を扱う希有な人間です! ツクヨミ君も未だその実力の全容を見せていません! 楽しみな組み合わせとなりました! さあ! 試合開始まであと少しです!』     「ハク君。君と僕は似ているね」     アナウンスの終了と同時にツクヨミが口を開く。     「似ていますかね?」     ハクはそれに問い返した。     すると、ツクヨミは無表情のまま答えた。     「剣術も魔法も得意。つまり、欠点が無いということや、冷静であることなどですよ。まあ、全く似ていない部分もありますが」     「似ていない? どのような部分がですか?」     ほほ笑みを浮かべ、ハクは言葉を発する。     「光と闇ですよ。まるで正反対。常に注目を浴びる君と、誰にも注目されない僕。僕ら二人は正反対だ」     まるで無表情のツクヨミから発せられる言葉。     感情が読めないその口振りに、ハクは苦笑した。     「それは、目立つ僕に対する嫉妬ですか?」     ツクヨミはじっくり考えた後、首を振った。     「いいえ。違います。不思議だな、と思っていただけです。扱う属性と性格には相関関係があるような気がして」     その言葉に、ハクは思わず頷いた。     「それについても研究が行われているようですね」     性格と属性は関係があると言われ続けてきた。     火属性の人物に激情家が多いように、風属性には楽天家、水属性は冷静な者が多い。     光と闇も同様だった。     「とりあえず、勝負しようか。僕らの勝負を楽しみにしている観客が多いようだし」     そう言い、ツクヨミはオールバックにしている黒髪を両手でセットし直し、直立不動の構えをとる。     (よく分からない人だ……)     そう思いながら、ハクも軽く構え、戦闘態勢をとった。
/454ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2929人が本棚に入れています
本棚に追加