決勝トーナメント

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  『はじめ!』     試合開始の合図と共に、ハクは体内の魔法力をフルに発動した。     魔闘術に加え、光属性の魔法力で体の表面を覆う。     手には光の魔法剣を具現化し、握っていた。     「発動速度、なかなか早いですね」     そう言うツクヨミは、ハクよりひと足早く準備を完了させていた。     魔闘術と、闇属性の魔法力で体の表面を強化している。     手には一メートルほどのごつごつした肉厚の杖を模した魔法剣を持っていた。     「まずは剣術勝負といきましょう」     ハクはにこりと笑みを残し、目にも止まらぬ速度でツクヨミに接近する。     「受けて立ちましょう」     余裕たっぷりで答えるツクヨミに向かい、ハクは光の剣を振り下ろす。     それは鈍い音を立て、ツクヨミの闇の杖に阻まれた。     ハクは、一旦態勢を建て直し連撃をたたき込むが、すべて防がれる。     「なかなか良い太刀筋です。が、少々単調ですね」     ツクヨミが呟きながら、杖を振るい反撃を開始した。     「……くっ……!」     薙払い、打ち下ろし、突き……。     ツクヨミが繰り出す攻撃を受けるハクの表情から笑顔は消えていた。  必死の防御を繰り返し、バックステップでツクヨミから距離をとる。     「ふむ。防御も良い。やはり君には才能があるようだね」     冷静。常に冷静に無表情を貫くツクヨミに対し、ハクは恐れの感情を持った。     「仕方ないですね。剣がダメなら魔法で勝負です!」     「良いですよ。さぁ、どこからでもどうぞ」     ツクヨミの返事を聞き、ハクはにこりと笑い魔法力を解放した。     (ツクヨミさんの強さなら……四?……いや、三か)     「うおぉぉぉっっ!」     気合いとともに叫び声をあげたハクが出現させたもの。     それを見た観客は一様に驚きを隠せなかった。     「分身……なるほど。良い魔法だ」     しかしツクヨミは動じない。     ツクヨミは目だけを動かし、ハクの周りを見据えた。     ハクは四人に増えていた。     そのうち三体はハクの魔法力で作り出した分身にすぎない。     しかし、それは一個一個がハクと同等の力を有している。     ツクヨミの不利は明らかだった。
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