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といってもメリットばかりではない。
というより、デメリットのほうが多いかもしれない。
「分身と本体は全く同じ身体能力。先程と比べ四倍の戦闘力になりましたね」
ハクに語り掛けるツクヨミの表情は全く変わらない。
「しかし、魔法力を四等分してますからね。あまり良策とは言えませんよね」
答えたハクの顔色はあまり良いものではない。
同等の力を持つ分身を作り出すには魔法力を犠牲にしなければならない。
つまり、作り出そうと思えば、十でも百でも作り出せるが、一体一体に配分する魔法力が少なくなる。
それにより、デメリットが発生する。
そのデメリットとは分身が消滅する条件に関係する。
分身は内在する魔法力がゼロになると消滅してしまう。
傷つけられた人間が体から血を流すように、分身は傷口から魔法力を垂れ流す。
つまり、分身にとって魔法力とは体力に等しいのだ。
一体一体に配分する魔法力が減るということは、それだけ分身の体力の上限が減ることを意味する。
ハクはツクヨミの実力から逆算して三体の分身を作り出した。
四体作り出すと、ツクヨミを倒す前に分身がすべて倒されると判断したからだ。
「この戦闘方法は、研究会のメンバーに手伝ってもらい習得したもの。みんなの為にも……負けられません」
ハクと三体の分身は一斉に動き出す。
それを見て、ツクヨミも魔法力を解放した。
「ならば僕も本気を出しましょう」
途端にツクヨミから、黒い物質が溢れだす。
それは大気中に拡がるように拡散し、空間を闇で埋め尽くそうとした。
ツクヨミはすでに闇の中に溶け込んでいる。
ハクは立ち止まり、ツクヨミに向けて手のひらを向けた。
分身も立ち止まり同様の構えをとる。
「何をするつもりかわかりませんが、阻止させてもらいます」
ハクと三体の分身から同時に光が放出される。
闇全体を照らすように放出された光の波紋。
それはさながらサーチライトのように闇の中へ飛び込んでいった。
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