決勝トーナメント

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  それは闇を蹴散らし、ぽっかりと穴を開けることに成功した。     丸く穴が開いた先には、観客席が見えるのみ。     ツクヨミの姿は見えない。     「どこでしょう?」     ハクと分身たちは、ツクヨミを探す為に光の放出をあらゆる場所に飛ばす。     しかし見つからない。     結局、不気味な闇はフィールドの外側を完全に覆い、ハクたちは闇の檻に閉じ込められる格好となった。     外界から光が入らなくなったせいで視界が一気に暗闇に侵食される。     「人間は二種類に分類できると僕は考えます」     ツクヨミの声が暗闇の中で響き渡る。     それはひどく不鮮明で、揺らいでいる。     どこから声が発せられているのかハクには分からなかった。     「暗闇に包まれると、途端に落ち着かなくなる人間と、逆に妙に落ち着く人間。この二種類」     ハクは黙って辺りを見回す。     分身たちも同じように辺りを見回していた。     「君は平静を保っているように見えますが、その本質は暗闇に耐性を持っていないタイプ……つまり、落ち着かなくなる人間のようですね」     ハクは頬に汗が伝うのを無視し、ツクヨミを探し続ける。     「さて。いまから私が攻撃を仕掛けます。君は耐えられますかね?」     ツクヨミはいたって冷静だった。     「光は防御に優れていて、闇は攻撃に優れている。闇対光。攻撃対防御。楽しみですね」     外側を覆っていた闇が体積を膨張させ、ハクたちに迫ってくる。     ハクと分身はフィールドの中央に集まり、魔法力を両手に込めはじめた。     「僕は……負けない。負けられない! みんなの目標であり続けるために勝ち続けなくてはならない!」     それはハクの本心だった。     一年前とは強さを目指す理由が変わっていた。     昔のハクは自分の欲求を満たすために強さを求めた。     しかし今は違う。     みんなの為に。     他人の為に強くなりたいという気持ちが、実力以上の物を引き出そうとしていた。
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