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一体目が消えてからは早かった。
二体目も、三体目も後を追うように消えていった。
「……ぬっ、ぐぅっ……!」
分身が消え去っても、ハクは諦めない。
自身の魔法力は残り少ない。
光球も消える寸前。
ツクヨミの姿さえ視認出来ていない。
そんな逆境が彼の集中力を極限まで高めていた。
本来、光球は相手の攻撃を留め、弾き返すもの。
ハクは一か八かの賭けに出た。
自分の持てる魔法力全てを上方に向かって解き放つ。
すると、光球の上部のみ膨れ上がり、闇の壁を吹き飛ばした。
ぽっかりと上方に開いた穴からは陽の光が差し込んできた。
そして、穴の向こう側に見える人影……。
(やはり上方にいたか!)
予想が的中していたことに喜びながら、ハクはツクヨミ目がけて跳躍した。
右手には光の魔法剣を持っていて、左手はツクヨミに向けている。
ハクの強襲に対処し切れていないツクヨミは、右に避けようとした。
しかし、それをハクは阻止する。
左手から光のレーザーを射ったからだ。
ツクヨミは動くのを止め、闇の杖を軽く握りしめた。
ちなみに、ツクヨミは空に浮いているが、これは魔法によるものだ。
風属性を扱えるものなら使える魔法である。
……習得は困難を極めるが。
ハクは初めから気付いていた。
ツクヨミは上方にいるはずだと。
なぜなら……。
(上から監視していないと状況が分からないから)
横からだと見えない部分が発生する。
だから、ハクは上方だと予想し、最後の攻撃を仕掛けたのだ。
ツクヨミに迫り、思いっきり剣を上に突き上げるハク。
迫り来るハクを迎え撃つツクヨミ。
勝負は一瞬で決した。
剣と杖が交錯し鈍い音を奏でる。
その瞬間、一方は高速で地面に向かって弾き飛ばされ、もう一方は上空からそいつを見下ろしていた。
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