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――バタンッ。
タクシーのドアが閉められる。
洋一は2年ぶりの我が家に目をやる。
(変わらねぇもんだな。)
ガチャ。
玄関が開き、中から母親が飛び出してくる。
「洋一っ!おかえりなさいっ!!
もう!空港まで行くって言ったのに。」
「大丈夫だよ、子供じゃないんだし。
父さんもタクシー代くれたしさ♪
それより、ただいま。」
2人が抱き合って再会を喜んでいると、玄関から洋一のミニチュア版がおずおずと出てくる。
「海斗っ!?でっかくなったなぁ!
おいで、ほらっ!…つっても覚えてないか。
お前まだ2才だったもんな?」
洋一には今年5才になる弟がいる。
母親が転勤に付いていかなかったのも、幼い彼を思ってのことだった。
海斗はうつむいたまま、もじもじしている。
年が離れた弟を、これでもかというほど可愛がっていた洋一は、少しショックだった。
「海斗、ご挨拶は?
さっきまでお兄ちゃんと会えるって、楽しみにしてたじゃない。」
早苗が海斗の背中を優しく送り出すと、海斗はようやく口を開く。
「こん…に…ちわ。おか…り…なさ…い。」
小さな声で顔を赤くして言う海斗。
さすがに2才の頃の記憶はないが、
自分の兄の話は聞いていたし、
兄の存在はうれしくてたまらないものだった。
しかし、いざ目の前にするとなかなか照れてしまうのだろう。
「ただいま、海斗♪」
洋一が照れている海斗を抱き上げ、優しく微笑む。
すると海斗は嬉しそうにニコニコ笑い、洋一の頬にチュッとキスをしてくれた。
(あっ、こいつもこうゆう教育うけちゃったのか…。)
「洋一、疲れたでしょ?中に入ってゆっくり休んで?」
海斗を抱えたまま家に入ると、久しぶりの我が家だ、やっぱり落ち着く。
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