初めての別れ

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  「ごめんね? いろいろ見てたら遅くなっちゃって。 栞莉ちゃん、今日は見送りに付き合ってくれてありがとう。」 洋一の母親・早苗が栞莉に礼を言う。 「………別にいいよ、最初から、来るつもりだったし。 母さんも来たがってたんだけど、いま締切前だから置いてきた。 ……あっコレ、………手紙。預かってきたんだ。」 早苗は栞莉から手紙を受け取り、封筒を開く。 横から譲二も覗き込み、2人で読み始めた。 『高岡夫妻へ だんな、アメリカ行くんだって? これで今年の夏は涼しくなりそうで、あたしは助かるわ。 まぁ3年なんてすぐでしょうよ。 気をつけて行ってらっしゃい。 ―笹田 涼子』 「フフッ、涼子さんらしいな。」 「ウフフ、ほんとね。」 夫婦は手紙を笑顔で眺めていた。 「涼子さん、相変わらず忙しいんだな。」 涼子の性格からして、こうゆう場には必ず来そうなものだ。 まぁ、栞莉と2人きりのほうが洋一は嬉しいのだが。 「………うん。 でもこの間は逃走してたし、まぁ好きにやってんじゃね?」 (そんなんでいいのか?) 淡々と答える栞莉に、洋一は敢えて突っ込むのをやめた。 『間もなく、〇〇〇航空、アメリカ行き、』 「そろそろ、行くか。」 アナウンスが流れると、譲二がつぶやくように言う。 4人は立ち上がり、ゲートへと歩く。  
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