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「っ、あなた!体に気を付けてね?
んっ。」
それからの数分間、譲二と早苗の熱い抱擁と口づけが続き周囲を唖然とさせる。
洋一の両親はとても仲が良い。
父親はハーフが原因なのか性格が問題なのか、とにかく人前だろうが自分の子供たちの前だろうが、実に愛情表現豊かだ。
洋一と栞莉はいつものことなので慣れてはいるが、さすがにこの状況は他人のフリをしたくなる。
ようやく2人が離れ、今度は洋一と栞莉にもそれぞれキスをする。
もちろん頬にね?
「……じゃあな、おじさん。」
「じゃあね、母さん。ちょっと行ってくるよ、元気で。」
それぞれの別れが済むと、洋一と栞莉は向かう合う。
「じゃあな、栞莉。母さんたちのこと、よろしく頼むよ。」
「……あぁ、分かってる。お前も、風邪ひくなよ?まぁバカは大丈夫か。」
栞莉は寂しさの欠片も見せないまま、洋一はそれに少し苦笑いしながら、お互いの頬にキスをする。
あの環境(父親)だけに、子供のころから当たり前にしている家族のキス。
それが最近、洋一は少し引っかかる。
頬から顔を離すと、目の前にある栞莉の顔にドキッとする。
栞莉は目に涙を溜めていた。
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