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「栞莉?」
洋一のシャツの裾を掴み、栞莉はうつむく。
洋一はフッと優しく微笑み、栞莉の頭を撫でる。
「ったく。素直じゃねぇよな?
すぐ帰って来るよ。」
「………。」
それでも栞莉は手を離さない。
「大丈夫。お前を1人にする訳じゃないから。なっ?」
洋一は子供をあやすように栞莉に言う。
「栞莉ちゃん、グスッ。
おばさんと一緒に待ってましょ?
栞莉ちゃんはうちの可愛い次男坊ですもの!ねっ?」
早苗が栞莉を優しく抱きしめると、ようやく栞莉は洋一から離れた。
(栞莉。っごめん!
でも今は離れたほうがいいんだ。俺にとっても、お前にとっても。)
「…いって…らっしゃい…。」
栞莉が振り絞るように小さな声で言うと、洋一も離れがたい。
「いってきます。」
洋一は覚悟を決め背を向けて歩き出すが、急に栞莉へと振り返る。
「栞莉ーっ!
お前、いい加減自分のこと俺って言うのやめとけよー?
3年後チェックするからなー?じゃあなぁ!
」
栞莉は、びっくりして涙が引っ込む。
なんで?と早苗に視線を向けると、
「フフッ、だって栞莉ちゃんは女の子だもの。
これからは次男坊じゃなくて立派なレディとして教育しなくちゃね♪
さぁ、帰りましょ?」
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