死体

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――…死体死体死体。死体の山。血の、鉄のような匂いや火薬の匂いが鼻をつく。 生者は自分だけ。 なぜなら、自分がこの死体の山をつくったのだから。 人間は脆い。 ちょっと首を、かっ切ってやれば直ぐに逝ってしまう。 産まれてくるのに、何ヵ月もかかる癖に、直ぐに壊れてしまう。…くだらない。 さっさと、この場から立ち去ろうとすると、後ろからガラリと瓦礫が崩れる音がする。 ゆっくり後ろを向くと、殺したと思っていた男が一人、腹から血を大量に流し、震えながら拳銃を構えている。 体は死にかけているというのに、目にはまだ火がともっている。 その目が、気に入らなかった。 おとなしくしてれば、楽に逝けたものを…。 男に近付いて行く。男は、まだ弾の残る拳銃をに向け、必死に発砲する。 だが、手元がふらついて中々当たらない。 発砲する弾も無くなり、追い詰められた男は、叫びながら突っ込んで行く。 冷めた目で突っ込んで来る男を見つめながら、サーベルで、男の首目がけて思いふるう。 見事に男の首は飛び、血が飛び散り、体にかかる。 死体がまた増えた。 人間はくだらない。 殺すことにも、何のためらいもなかった。虫を潰すのと何の変わりもない。 今日もまた、町の人々を皆殺しにする任務。 今までどおり、この目の前の猫を抱える少女も殺す。はず…。 「ねぇ。何で私達を殺すの?」 聞く気は無かった。でも、耳が勝手に聴いてしまう。 「お母さんもお父さんも、皆皆…お兄ちゃんに殺された。ねぇ。何で私達を殺すの?」 サバイバルナイフを首に近付ける。 「私も殺すの?」 目に脅えは見られない。ただ深い深い闇が広がっているだけ。 「なら、この猫は助けて。この猫は、何も悪くないから。お願い。」 ニャァと猫が鳴く。 サバイバルナイフを持つ手にグッと力を入れる。 「………お兄ちゃん。」 少女の目が俺を映す。 「次は貴方が死ぬ番かもね。」 笑った。少女は確に笑った。初めて恐怖を感じた。 サバイバルナイフを少女の首に突き刺し、切り裂く。血が、猫にかかる。
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