目が訴える

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さて、どうしよう。 少女の血でカピカピになった猫の毛。…水で洗うか。いや、水は貴重だ。使うわけにはいかない。猫には悪いがこのままでいてもら… 猫の目と少女の目が重なる。 『ねぇ。何で私達を殺すの?』 頭に流れる少女の言葉と顔。 「……ぐッ…ゥ…!!」 頭が胸が…痛い…。 『お母さんもお父さんも、皆皆…お兄ちゃんに殺された。ねぇ。何で私達を殺すの?』 俺が…殺した。少女の家族を…。理由も無く…。ただ敵国だからというだけで。何の関係も無い人達を。 それが任務だから。 少女の家族だけじゃない。何人も何人も何人も…。この手で…殺した。 『私も殺すの?』 少女の目が俺に訴える。ヤメロ。見ないでくれ。 少女が笑う。 『次は貴方が死ぬ番かもね。』 「ァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーッ!!!!」 苦しさの余り床に蹲る。 少女の首をかっ切る感触。血の温かさ。瞳。全てが頭に蘇る。 「ウグッ…ァア!!」苦しい。苦しい苦しい苦しいィ!息ができない。 「フッ、…アァ!ハァッ!」 闇が、闇が俺を包む。 「ニャァ」 猫が心配そうに俺の頬を舐める。 猫には少女の…血。 「ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙アア゙ア゙アアア!!」 サバイバルナイフを握る。 この猫だ。この猫がいる限り…。 『――…お願い。』 再び少女の声。 『なら、この猫は助けて。この猫は、何も悪くないから。お願い。』 「ゥッ……アァ。」 一気に力が抜けた。身体中汗まみれだ。 なぜ俺はこの猫を助けたんだ。
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