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「ふわぁ~~~」
赤いランドセルを背負った女の子が、思いっきりあくびをしながら通学路を歩き、学校へと向かっていた。
今日はいつもより早く起きたので、途中で合流するはずの学年下の友達はまだ来ていなかった。
別にいつも約束している訳じゃなく、同じ場所で大体一緒になるだけ。
毎日会うのでお互い何となく一緒に登校する様になって、どちらともなく仲良くなり、今に至る。
先に学校へ行こうかとも思ったが、どうせ早く行ったところで何も嬉しい事は待っていない。
それよりも、友達と喋りながら登校した方が楽しい。
そう思い電柱に寄りかかりながら待つ事に。
いつもの合流場所は、人通りの少ない住宅街の細い交差点だった。
女の子を追い越す道行く人は、同じ学校の子かサラリーマンが殆んど。
まだ春も始まったばかりの肌寒い朝。
女の子は少しでも日向で暖を摂ろうとする。
しかし寒いのは人間だけではないらしい。
女の子の向かい側には、車のボンネットの上で暖をとっている猫がいた。
さっきまで動いていたのか、車には朝露などついておらずエンジンは暖まっているようだ。
きっとノラなのだろう、首輪はついていなかった。
しかし、ペットショップでも売っていそうなアメリカンショートみたいな毛並みで、グレーがかった短毛の猫だった。
「お前、温かそうな場所にいるね~」
そう声をかけると、みゃおぅと返事をする。
思っても見なかった反応に少しビックリして猫をまじまじと観察する。
しかし、本当に女の子に対して返事した訳じゃなく、丁度その時別の猫が、塀の上から車へと飛び降りて2匹仲良く寄り添っていた。
後から来た猫に挨拶しただけなのだろう。
「なんだ、お前も友達を待ってたのか・・・。」
折角の話し相手を取られた気がして、少し淋しくなる。
「わぁ~!おはようぅ。未音ちゃん今日早いね♪」
朝からテンションの高い声が辺りに響く。
待ち合わせの相手が来たようだ。
「羽衣ちゃん遅い~」
「未音ちゃんが早いんだよぅ・・・」
「へへへ。実は朝早く目が覚めちゃってさ」
そして二人はいつもの様に学校へと向かうのだった。
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