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何だか最近気になる奴がいる。
自分と同じマンションに出入りしてる所を見掛けたりするけど、部屋に入る所を見た事がないので住んでいるかは分からない。
単に遊びに来ているだけかもしれない。
そんな事をぼんやり考えていると、その気になる奴がエレベーターに乗り込んできた。
いつもは他の大人がいたりするのに、今日に限っては二人きりだった。
だからか、思わず話し掛けていた。
「…あんた最近よく見掛けるけど……このマンションに住んでるの?」
「……」
しかし返事はなく、つんとしている。
「…むぅ……生意気!未音ちゃんを怒らせると、こぅするんだからね!」
いきなり抱きつくと、体を持ち上げゆさゆさと揺さぶる。
「に、にゃぁ~ぁぁ!……ゃめっっ!」
「あれ??……今・・喋った!?」
小学生であるはずの未音が抱き上げ揺さぶる事が出来るのは、相手が猫だからであって人間が相手だとしたら、どちらかというとされる方だろう。
しかし、猫が喋るのは異常としか言い様がない。
未音は吃驚していても、手を離す事無く抱き上げ、しげしげと眺めている。
もう一度喋るのを待つ様に・・・。
チーン
そんな時、目的地に着いた事を知らせる音が鳴り響く。
「っイタ!」
いつまでも抱かれているままの猫ではなかった様だ。
未音の手を噛んで緩んだ腕を振りほどき、エレベーターから出て行ってしまった。
「あっ、待って!」
あわてて追いかけるが、どうやら見失ってしまった様だ。
未音の手からは血が滲んでいた。
ちょっとした噛み傷なので血は直ぐに止まるだろうが、念の為消毒をしようと家に戻る事に。
ふとエレベーターの奥に目をやると、普段だったら気付かないくらい小さな何かが光った。
初めはただの光の反射だと思った。
が、近づいて良く見ると、小さなスイッチの様なものだった。
それは直径5㎜程度の円形のスイッチ。
「なんでこんな所にボタンがあるんだろう?」
エレベーターの奥の壁の角の下の方。普通のエレベーターには絶対付いていないモノだ。
「押しちゃダメかな?」
押そうかどうしようかソワソワしながら見つめていたが、好奇心には勝てず、ついには押してしまっていた。
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