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カコン
と、何かが外れるような音と共に、ぐんと下に押さえ付けられる感覚が続く。
「わわ。え?何!?」
急な開放感と共にチーンと音が鳴る。
扉が開く音はすれど、一向に開く気配がない。
しかし、普段から鏡があり絶対開くことのない壁側が、今は大きな口を開けていた。
あまりの驚きに声が出ず、しばらく暗い廊下の様な空間を凝視していた。
しばらく見ていて少しは慣れたのか、また好奇心が働いてエレベーターから降りてみることにした。
それでも、恐る恐るといった感じで進むと、6畳くらいの広さの部屋に出た。
中はがらんどうで、白い壁があるだけの素っ気ない部屋だった。
電気は点いていないのに、不思議と仄明るかった。
「何でマンションにこんな秘密の部屋があるんだろう?・・・さっきの猫と関係あるのかな?」
未音が数歩進むと、部屋一面が光った。
入室に反応して立体映像が映し出されたのだ。
「わぁぁぁぁ!!」
しかし未音は立体映像など見た事もないし、存在自体も知らないので何が起きたのか訳も分からず、再びエレベーターへと走っていった。
流石に怖くなって、自分の家がある階のボタンを連打した。
家に帰ってからもドキドキが治まらなかった。
白昼夢だったのか、それとも本当に現実だったのか、今の未音に確かめにいく勇気と気力がない。
取り敢えず今は、家に戻って来た目的を果たす事にした。
「ううう・・・」
消毒液を含ませたティッシュを、先程噛まれた傷口へと当てる。
猫が喋ったのも気のせいなのかな?と思いながら絆創膏を貼る。
一先ず、今の出来事をこのまま胸に締まっておく、なんて事は出来そうにない。
白昼夢だったにせよ、この話は羽衣ちゃんに話す事はすでに決定した。
「よし!」
気合いを入れると、さっきまでの不安なドキドキはもう消えた。
エレベーターの前まで来たが、流石にもう一度乗る勇気はなかったので、脇にある階段の方を使った。
この出来事を1秒でも早く伝えたくて、軽快な足取りで階段を下りていく。
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