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「お待たせ」
用意ができたらしく夏樹が玄関から現れた。
真新しい紺色のブレザー姿の夏樹は、普段のやんちゃなイメージとは違った為、とても新鮮な気分だった。
「どう?
高校生になったわ・た・し。
見とれちゃった?」
…………。
いつも通りの夏樹に、新鮮な気分は吹き飛んだ。
「早く乗れ。遅刻するぞ」
「もう!つまんないの」
携帯電話を開いて、時間を確認する。時刻は8時7分を廻ってしまっていた。
普通に走ったら確実に遅刻する時間である。
……使いたくはなかったが、こうなったら最終手段しか手は残ってない。
「……エベレストから行くぞ」
「え~!?」
夏樹の表情は、背を向けているため見ることはできないが、その憂鬱そうな声から容易に想像することができた。
「仕方ないだろ。俺だって嫌だよ」
そう言うと夏樹は深い溜め息を吐いた。
「私も走らなきゃならないじゃん」
いや、当然だろう。
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