抗鬱剤をちょうだい

端緒

たかが体育の授業で行う測定なので、スタートの合図は旗で行う。
それでも彼女は、他の者とは比べものにならないスタートを切って見せた。

全国に出場するほどの実力を持つ、女子陸上部の期待、片桐･空。

スタートと同時に、周りにいた女子連中から歓声が上がる。
それによって、オレと恭一の目もそちらにいった。

見惚れるような走り。
圧倒的存在感。

「は、や…ッ…」
「や…っべ…」

間抜けな言葉を、ついオレ達は口にする。

彼女の努力の結晶ともいえるソレは、とても力強く、そして、美しかった。