prologue

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  夏って寒い。  今年の夏に入って初めて涼しいと感じた。 夜中の三時に海辺に来るのもどうかと思うが、夜の誰も居ない海は綺麗だ。 波が時々音を立てて押し寄せる。その一定の運動は、わたしに少しの恐怖を与えた。 「…寒い」  自分を抱くようにして寒さをしのぐ。こんな時に何をしてるのだろう。八月の上旬。大学の友達の麻紀とその彼氏である輝君と男友達の亮とわたしの四人で旅行にきている。 明日は帰る日。そして、告白の返事をする日でもある。旅行の前に男友達の亮から告白をされた。麻紀と輝君はくっつけがっている。確かに高校生の時も告白されて、また告白してくれるなんて真剣さが伝わるし、一緒に旅行に来て楽しかったし、格好いいし付き合ってみてもいいと思う。   でも 「…んー」  何故か分からないが、付き合うのは…嫌。 自分でもよく分からない。 まるで――他に好きな人がいるかのような―― 「こんなとこで寒くない?」  
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