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時間の感覚は失われていた。
ただ目を閉じ、ゆっくりと上から雪の様に静かに積もる泥の重さと、動かない自分の躰が冷えて行くのを受け入れていた。
冷たい。。
重たい。。。
暫くすると、また光りが見えた。
チラチラとまた頭の隅が光り始めた。
接触の悪いテレビの様に、時々映像は乱れる。
また腕が見えた。
今度はチャコールグレーのスーツの様な物から覗く…手?
スーツの裾から、銀色の鈍い光りが見えた。
おそらく腕時計で時間を見ているのだろうと思った。
文字盤までは見えない…
一体、誰なんだろう?
知っている人なんだろうか…
すると次に女性が見えた。
黒髪の女性…
誰だろう…声は聞こえない。
笑顔で話し掛けてきているのが上がった口角でなんとなく分かる。
女性が指差す方向へ画面が移る。
窓があった。
また女性が映る。
手に持っていた茶封筒を渡し、去って行った。
そしてまた映像は消えた。
私は、また一人残った。
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