188人が本棚に入れています
本棚に追加
『当たり前の様に、毎日家にいて家事をやっていると思っていたが、実際は何処に居たのかも分からないんだ。好きなテレビ番組も、好きな歌すら知らない。結婚前までは、あんなに相手を知ろうとするのに、不思議なもんだよ。』
『そんなものじゃないですか?私は結婚はまだなんでよくは分かりませんが…、家族だってそうですよ。』
『ありがとう。』
お互い続ける言葉が見付からず、私も水を飲んだ。
その後は、二人は妻の話に触れる事なく食事をし、別れた。
私は、自宅の最寄り駅に降り、夜空の下歩いた。
また、ここから20分。
誰も居ない家に戻る。
当たり前の様に、カーテンから漏れる灯りを見て、暖かい玄関に入る。
それが毎日だった。
その灯りすら疎ましく思った日もあった。
でも、失って初めて有難かった事を知った。
この世の中に当たり前の事なんて、何もないのかもしれないな。
そう思い、なんとも苦い気持ちになった…。
(早く帰ろう…。)
冷たい風の中、重い足を進めた。
最初のコメントを投稿しよう!